![手仕事屋久家さん作の美しい金継ぎの器](https://karuta-japan.com/articles/kintsugi/img/intro01.jpg)
日本の伝統的な修復技法・金継ぎ
割れてしまったり欠けてしまったお皿やカップを修復する日本の伝統的な修復技法、それが金継ぎです。漆で破片を接着し、接着面を金で装飾することから金継ぎと呼ばれています。
この金色がとても味わいがあり美しく、茶道の世界では景色と呼ばれ芸術と称されるほどです。
そして、壊れても修復し末永く愛着を持って使う「ものを大切にする心」がそのまま表れた技法というところに、もう一つの美しさがあります。
〜伝統技法〜
Traditional technique
割れてしまったり欠けてしまったお皿やカップを修復する日本の伝統的な修復技法、それが金継ぎです。漆で破片を接着し、接着面を金で装飾することから金継ぎと呼ばれています。
この金色がとても味わいがあり美しく、茶道の世界では景色と呼ばれ芸術と称されるほどです。
そして、壊れても修復し末永く愛着を持って使う「ものを大切にする心」がそのまま表れた技法というところに、もう一つの美しさがあります。
日本の美意識は独特で、西洋の絢爛豪華さと比べ、どこか地味な印象です。しかし、かえってそれが魅力的。無駄をそぎ落とした質素さの中に美しさがあります。金継ぎの美しさは、日本の美意識そのものと言えます。
なにより金継ぎのいいところは「もっと愛着がわく」ところ。割れや欠けを、少しずつ自分の手で修復していくからこそ、多少の歪みも味わい深く見えます。
完成すれば、それは世界に一つの器。日常はもちろん特別な日にこそ使いたくなる、特別な器となります。
今回、金継ぎを体験させていただいたのは、新高円寺に工房を構える「手仕事屋久家」の久家義一郎さん・淑子さん。もとより50年を陶芸家として活躍されているお二人。土に精通し、触れるだけで「何焼き」か分かるというから驚きです。日々、寄せられる器の修復依頼を受けている中で、本格的に金継ぎを始めたといいます。
壊れてしまったとき、どのような方法でなおすか。より丈夫に、より美しくするにはどうしたらよいか。その工程は、まるで人生そのものだと感じたといいます。
そうして39年。「この器(土)にはこの接着方法」など、素材を見極め、最適な修復方法を追求し続けてきました。
「器は口につけるもの」という思いから修復に使う道具も厳選。使う人自身への配慮も徹底されており、久家夫妻の優しさがそのまま技術となっていることがわかります。そんなお人柄と達者な英語が、外国人旅行者が多く訪れる理由のひとつです。
体験が始まる前に、淑子さんお手製のアップルティーとケーキでおもてなし。お話を聞きながら工房を見渡すと、金継ぎされた器がずらりと並んでいます。欠けを修復したものから完全に割れてしまった器など、どれひとつとっても同じものがありません。
体験前の準備として、服が汚れないように前掛けを着用。着物のような柄や酒屋の前掛けなど「日本ぽさ」を味わえてみなさん興奮気味! 前掛けをすると、いよいよ体験スタート!
今回は、こちらの湯飲み茶わんの「欠け」の修復を体験します。一緒に体験するのはクリスさん、ちかこさん、そしてシャーロンさん。
シャーロンさんは、以前カナダの教会で金継ぎの映像をみて以来「いつか日本で金継ぎを」と決めていたそう。念願叶い、テンションは高め! 周囲まで明るくする魅力あふれる方々と共に体験できました。
器は久家さんが用意してくるので、体験には手ぶらで行けます。もちろん持ち込みもOK。体験は2時間なので事前に久家さん相談しましょう。もし2時間で終わらない器であっても、どの順番でなおせばよいか教えていただけるので、直したい器があれば持参するとよいでしょう。
さぁ、はじめよう!
まずは器の欠けた箇所をパテで埋めていきます。本漆を使う修復方法もありますが、久家さんの体験ではパテを使用。誰でも手に入れられるし、なによりかぶれないから初めてでも安心です。
パテ塗りのポイントは欠けた箇所にしっかり詰め込むことと、少し盛り 上がるくらいに塗ること。ただし盛りすぎると次の磨きの工程がたいへんなので、盛りすぎ注意です。
パテが固まったら、器の面と平らになるまで金属のやすりで磨いていきます。余分なパテを削るにつれ、徐々にやすりと器が当たりはじめます。器が割れないか心配でしたが、そのくらいでは傷もつかないくらい磁器は丈夫とのことで。
口があたる部分からはじめ、器の内側、次に外側と順に磨いていきます。特に難しかったのは外側。外にむかって少し反っているので磨きづらい! やすりを短く持ち、細かく動かして削っていきます。削り終えると盛り上がっていたパテが「欠け」の形にぴったりとおさまり、一体となります。
次は紙やすりに持ち替えて、表面をよりなめらかに仕上げていきます。水をつけながら磨いていくと、先ほどまでザラザラしていた表面も磁器と同じくらいピカピカに仕上がっていきます。
磨きの工程がおわり、欠けていた箇所にピタリとおさまったパテをみると、いっきに愛着がわいてきました。自分の手で修復する楽しみを実感した瞬間です。
パテが乾いたら、いよいよ漆を塗っていきますが、ここでも久家さんならではの粋なはからい。
本来、漆は濃い茶色をしていますが、手仕事屋久家さんでは「より美しく修復」するために、漆に金粉を混ぜます。このひと手間があることで、後々金粉がはがれしまっても、美しい金色が失われることはありません。外国からの体験者も多く、持ち帰った後も末永く金継ぎを楽しめるのは、手仕事屋久家さんならではの心遣いです。
まず、パテと器の境を金色の漆で囲い、囲い終えたら中を塗りつぶしていきます。高台内(器の裏)にイニシャルを書かせてもらいました。
かるたJapanの「あっぱれ」アイコンと「K」の文字。なかなかの出来栄えに満足。
最後の工程は、金色の漆に筆で金粉を振りかける作業です。筆が漆にあたってしまうと漆に跡がついてしまうので、漆の周りを金粉で囲ってから徐々に振りかけていきます。金粉をまぶすことで品のある金色へと変わっていきます。漆を塗った箇所すべてに金粉をかけていきます。
体験での工程はここまで。2日間、乾燥させたあと金粉を洗い流し、さらに2週間おくと使用できるようになります。完成は家に帰った後のお楽しみ!我が家では、日本酒を楽しむときや、そば用のお猪口として活躍しています。
久家さん厳選のタッパーで割れないよう包装してくれるので、旅行者の方もかばんにいれて持ち帰れます。
はじめての金継ぎ体験は予想以上にお手軽で楽しくできました。特に力がいるわけでもなく、細かい作業が苦手でもそれが逆に味わいになりますし、失敗はありません。
自分で作り出した景色にこそ価値があると実感できる素晴らしい技術でした。もちろんこの技術は大切な器やブランドグラスなど、和風の器以外にも使える技術です。
金継ぎをすれば世界にひとつしかない、あなただけの一点物に早変わり。ぜひ「金継ぎ」の美しさと、日本伝統の技術を体験してください!