〜伝統技法〜

江戸手描提灯

江戸の夜を照らした
粋な灯

Traditional technique

Edo Tegaki Chochin

Written by かるたJapan

江戸手描提灯の体験
江戸時代に使われていたぶら提灯
江戸時代に使われていたぶら提灯

江戸時代、提灯は灯り以外にも役割があった

江戸の夜は現代と違い、周辺に灯りもなく真っ暗だったと言います。当時ろうそくが灯りとして使われていましたが、風で火が消えてしまう難点がありました。そこで生まれたのが提灯です。

おなじみの赤提灯や夜道を照らす「ぶら提灯」など用途によって様々な形へと進化しました。提灯は灯り以外に、身分を表す役割もありました。

提灯に大きく描かれた家紋などは、夜道を歩いている人が誰かなのか、遠くからでもわかるよう描かれたものだったようです。提灯の歴史に「なるほど」とうなづいたところで、体験スタート!

浅草 江戸手描提灯の大嶋屋恩田さん
今回体験をさせていただいた江戸手描提灯の大嶋屋恩田さん
大嶋屋恩田の五代目 恩田俊二さん
大嶋屋恩田の五代目 恩田俊二さん

今回体験でお世話になった職人さん

今回の体験でお世話になった職人さんは、大嶋屋恩田の五代目 恩田俊二さん。江戸手描提灯の伝統を現代に受け継ぐ職人さんです。現在は六代目に跡を継ぎ、ご自身は体験教室をご担当されています。

体験教室には大人はもちろん、お子さんもたくさんくるとのこと。俊二さんの優しくて明るいキャラクターに引き寄せられているようです!

提灯の作り方
提灯はこの器具を骨組みに組み立てていく
提灯の作り方
骨と紙を貼り付けたら、器具を分解して提灯が完成する

体験前に提灯 HOW TO!

まずは江戸手描提灯の解説をしてくれます。冒頭の提灯の歴史をはじめ、種類や素材、作り方にいたるまで教えてもらえます。

これから自分が体験するものが、どのような意味があり、どう進化してきたか知ることで、より具体的なイメージをしながら作ることができます。私は江戸の夜道を想像しながら描きました!

さぁ、はじめよう!

江戸手描提灯を
体験する

LET'S GET STARTED
-Edo Tegaki Chochin-

江戸手描提灯の体験スタート

まずは用紙に試し描き

提灯に描く前の下書き
提灯に描く前の下書き。書くというより描くが近い
描き文字と塗り文字
左が描き文字、右が塗り文字

提灯に描く前に、平面の用紙に試し書き。体験教室に来る前に、何を描くかイメージしておくとスムーズです。描く文字が決まったら、文字間を調整しつつ下書き。私は「かるた」の3文字でチャレンジ。提灯の文字の描き方は2種類。

描き文字:習字と同じように文字を描いていく
塗り文字:輪郭を描いてから中を塗りつぶしていく
今回は、見た目も提灯らしい塗り文字をチョイス。江戸時代の提灯の用途に合わせ、描く文字は太めに大きく! 字は下手ですが、そこはご愛嬌!

木炭で提灯に下書き

提灯に柳の木炭で中心線を描く
中心線を描く。一気にスッと書くのがポイント
真正面から見たとき均等に見えるよう描かれている
赤い部分を横から見ると斜めに描かれているのがわかる

イメージをつかんだら、いよいよ提灯に当たり(下書き)をします。まず柳の木炭を使い中心線を薄く描き、文字数に合わせて印をつけていきます。 次に文字の大きさが均等にみえるよう、型紙にそって印をつけます。

提灯は湾曲しているため、中央の文字に比べ上下の二文字を幅広く描く必要があります。 飾られている提灯の赤い塗り部分を見ると、真正面からはまっすぐ見えますが、横から見ると斜めに描かれているのがわかります。

提灯の湾曲に合わせたあたりを描く
提灯に型紙をあてがい、文字幅が分かるよう線を描く
提灯に柳の木炭で下書き
文字の幅や大きさを調整しながら下書き

提灯に型紙をあてがい薄く印をつけます。この印に合わせて文字を描いていきます。

最初に文字の輪郭を描いていくのだが、、、難しい! 提灯の骨組みとなる「骨」がでこぼこしているので、線をまっすぐ描くことすら緊張する。 上下の文字は幅広く大きく、中央の文字は少し狭く描きつつ、遠目で見てバランスをとりながらなんとか当たり完了。

墨(スミ)で文字の輪郭(りんかく)を描く

墨で提灯に輪郭線を描く
墨で輪郭線を描く。「か」の点と、「る」を赤くした

木炭で下書きを終えたら、いよいよ墨(スミ)で輪郭線(りんかくせん)を描いていきます。タオルでパタパタと叩いて木炭を軽く落とし、細めの面相筆をつかって素描きをするが、これがまた手ごわい。

ポイントは筆を寝かせず、立てて描くこと。凹凸があるので、筆を寝かせると予期せぬところに墨がついてしまう。緻密に描かれた提灯の文字には、職人さんの手技の集大成でした!

文字の中を墨で塗っていく

文字の中を塗っていく
平面と違いデコボコしており、塗りが難しい

素描きが完成したら太めの筆を使い、文字の中を墨で塗っていきます。先ほどの工程と違い今度は面で塗ります。
枠線からはみ出さないように注意しますが、骨のでこぼこで隙間ができたり墨がたりなかったり付けすぎたりと調整が難しい。
立体的な提灯を、塗りやすい角度にあちこち変えながらなんとか、塗り終わり。

乾燥後、スキマを埋めるように塗る

光に透かして隙間を見つける
光に透かして塗りが甘い箇所をさらに塗っていく

一度乾かしたのち光に透かしてみると、塗られていない部分がよくわかる。この隙間を1か所ずつ埋めながら、二度塗りをしていきます。
この二度塗りをすることでより重厚な色となり、どっしりとした文字が際立って美しい。黒い箇所、赤い箇所のスキマを塗って乾燥。

提灯に蒸気を送って折りたたむ
内部に蒸気を送ることで墨がのった箇所もきれいに折りたためる

塗り終えたら、提灯を折りたたむために内部に蒸気をおくる。こうすることで、墨で文字を書いた個所も美しくたためます。 折りたたむ時は、上下から蒸気が出てくるので注意が必要です。

江戸手描提灯の完成

再度広げて、持ち手の部分である弦をつけて完成!どうですか? なかなか上手くできたのではないでしょうか!

江戸手描提灯の体験を終えて
みんなで行けば、より楽しい体験となります!

体験をおえて

今回、体験した提灯は縦27㎝ほどのミニサイズでしたが、文字を描くだけでも想像以上に手間も時間もかかりました。この何倍も大きな提灯に高い精度で文字を描いていくのはまさに職人技。

提灯の描き文字が漢字の雰囲気を際立たせていてかっこういいし、生成り色の紙には墨ならではのマットな色合いがよく似合います。一筆一筆に緊張しますが自分だけの提灯が出来上がっていく過程は、とても達成感があります。

友人やご家族でいくと、お互いの作風がみられてより楽しい時間になるのでオススメ。江戸の夜を照した提灯は、現代でもお祭りや赤提灯など粋な風景には欠かせない存在です。ぜひ、日本の夜を照らしてきた提灯を体験してみてください!

大嶋屋恩田さんまでのアクセスはこちら

  • 場所: 浅草駅から徒歩3分
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  • 体験教室のお申し込みは注意事項をご確認のうえ、メールかファックスにてお申し込みください。体験道場については、お申込み前にお問合せください。